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俺と春香とプロデューサー 1


―変わらないものなど何もない

―例え、彼女自身が変わらなくても、彼女を取り巻く環境は目まぐるしく変わっていく

Bランクになってから、しばらくが経った。春香は名実共にトップアイドルとなり、彼女の元には多くの仕事が舞い込んでいた。
俺も春香も、忙しいながら充実した毎日を送っていた。

そんなある日のこと



それは、トップアイドルにとって宿命なのかもしれない。夢を叶えるためには、代わりに何かを犠牲にしなければならない。
春香だけに限った事ではない。トップアイドルを目指すなら、きっと誰もがいつかはぶつかる壁なのだ。
だからこそ、春香には乗り越えて欲しかった。春香なら乗り越えられると思った。
彼女の強さは、ずっと側で見てきた俺が誰よりも知っている。

―でも、一体どれだけの事を知っていたと言うのだろう

―彼と彼女は、プロデューサーとアイドルという関係でしかないというのに

それからも、仕事量は増加の一途だった。
スケジュールは分刻みになり、仕事が夜遅くにまで及ぶ事も多くなった。
家に帰る事が出来ずに、ホテルに泊まる事もしばしばだった。

はじめは、仕事を制限する事も考えた。
しかし、今はトップアイドルとしての足場を固めるための大切な時期だ。
おいそれと仕事を減らすわけにはいかない。
それは彼女もわかっているはずだ。わかってくれているはずだ。
だって、俺も春香もトップアイドルを目指して、今まで頑張ってきたのだから。

―それでも、春香への負担が大きくなっている事は目に見えて明らかだった

ある日、俺は彼女にこんな提案をした。

「こっちで、一人暮らししてみる気はないか?」

2時間という通勤時間、それは彼女にとって負担以外の何物でもない。
それに、以前のように電車通勤というわけにもいかない。
そんな事をすれば、たちまちパニックになってしまう。
それほどの人気を、今の彼女は持っている。
現実的に考えて、仕事と学業の両立を目指すなら、上京して一人暮らしする事が最善の方法だと思った。

しかし、決して彼女は首を縦に振らなかった。

―答えなんて、最初からわかりきっていたのかもしれない

もし、一人暮らしをするとなれば、学校を変わらざるを得ない。今の友達とは離ればなれになってしまうし、家族とも頻繁には会えなくなる。
それは彼女にとって、とても耐え難い事なのかもしれない。

彼女は沢山の人に支えられている。家族、友達、そして数多くのファン。
そうした支えの上に、今の彼女がいる。

―それこそが彼女の強さなのだ

もし、その支えがなくなってしまった時、彼女は今までのように歩く事が出来るだろうか……?

「プロデューサーさん、どうしたんですか?ボーッとして。最近、仕事が忙しいし、疲れが溜まってるんじゃないですか?」
「ん?いや、心配ないよ。それに、疲れが溜まってるのは春香も同じだろ?」
「私は大丈夫です!若いですからっ」
「それは、遠回しに俺が若くないって言ってるのか!?」
「えへへ、冗談ですよっ。確かに疲れてないって言ったら嘘になるけど、私はみんなから沢山元気を貰ってますから。だから、大丈夫ですっ」
「そっか……、そうだな」
「それじゃあ、プロデューサーさん。今日はお疲れまでした」
「あぁ、お疲れ様。気をつけて帰れよ」

そうして、いつもと変わらぬ笑顔で彼女は去っていった。

俺は、春香のために何が出来るのだろうか?
プロデューサーとして、彼女の側にいる事が出来る時間はもうほとんど残されていない。
それまでに、俺は何を残せるだろうか?

― 結局、俺一人で彼女を支える事が出来たらなんて、そんなのただの傲慢でしかないのだから
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